★ぼくの地球を守って
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★ぼくは地球と歌う
1巻,
9話
ぼく地球ネタバレ感想の続きです。
文庫版は全部で12冊。
キャンペーン中だったので4000円程で買えました。
濃い内容ですし、十二分にお買い得だと思います^ - ^
夢に楽土求めたり。
2巻のキャッチコピーです。
次第に夢が各々の苦しみに変わっていくストーリーの中で、秋海棠のキーワードはとても皮肉に感じます。

雑誌で探して、柊の記憶を持つ大介と、繻子蘭の記憶を持つ桜に出会います。
二人はさらに夢をたくさん見て居ました。
夢は過去世だと伝えられます。
さらには、夢の彼らは異星人だと。
夢が進むと、やがて、彼らの母星は戦争で全滅したと教えられます。
その後は
月基地で伝染病が流行り、彼らは死んだと知らされます。
ショックを受ける迅八と一成。
夢は過去世で、僕らは地球人として転生したのだと。
ロマンチックな世界観が語られます。
また、読者に対しても夢の概要がまとめられて教えられます。
母星→月基地に研究者として派遣→戦争で母星が全滅する→醜い議論→病原菌繁殖→全員死去
ぼく地球は、序盤から複雑な展開が続き、多くの読者は意味がよく分からず混乱したまま読み進めなくてはならない作品となっています。
序盤から語られるのは、前世を夢に見るという不思議な体験。そして、次第に夢は彼らの心情までを侵食していきます。
過去に何があったのか、夢はどういう方向へと進むのか、そして現世に転生した7人はどうするのか、そういった複雑な人間模様を追っていく作品になります。
一方、亜梨子は夢が楽しいものだけではないと知り、過去を知る事を怖がり始めます。
また、昔から何度も夢を見続けてきたという他4人と比較して疎外感を持ち、自分は木蓮ではないのではないか、と思いました。
一成もまた、前世である槐の玉蘭への想いに、振り回され始めます。
一成は自分自身が迅八を好きなのか、エンジュの記憶に振り回されているだけなのか、それも分からずに混乱し始めます。
建設会社の社長のお坊ちゃんタカシが
不審者Sに呼び出されます。
世話役の田村は一人でSに会いに行きます。
田村と夕食を約束していた春彦は、予定をキャンセルされます。
呼び出された廃屋には、幼い少年・輪が居ました。
呼び出したタカシではなく、田村が来たことに怒る輪。
不思議な超能力を使う輪は、子供とは思えない殺気を放つ目をしていました。
報復として輪は田村のアバラを超能力で折ります。
田村の危機を悟って、瞬間移動で駆けつけた春彦は輪と目が合います。
輪の東京タワーの設計図は、結果として松平建設の社長の手に渡り、東京タワーは意図通りに改築されます。
輪が田村のあばらを折るという事件で、読者は輪がちょろっと暴走してみた様なものではないと知ります。
超能力が使えることが楽しくていきがってみた、という事では説明できない程に輪は狂気に呑まれています。
物語が進むほどに多くの読者を魅了していく輪ですが、この時点ではまだ読者は輪の殺気に圧倒され、ビビる段階だと思います。ヒロインの婚約者という立場にありながら、輪は物語の中でしっかりと『悪役』の役割を果たします。
たとえば少年マンガですと、正義の主人公が悪い敵を倒す展開が普通です。
田村は良識ある成熟した精神と正義感ある男性として描かれており、対して輪は不思議な力で人を傷つけることを厭わない狂気に堕ちた人物になっています。
幼い私は、どちらに感情移入すべきか混乱しました。
とりあえず理解しやすい心情が描かれる田村よりに冒頭は読んでいたと思います。
どこで、輪に感情移入していったのでしょうか・・・。
物語を通して描かれる輪の魅力は多々ありますが、一つは 8歳という年齢に相応しくないこの狂気こそが小林輪の魅力になります。
亜梨子の夢関係の会合に付いてくる輪。
婚約者となった二人は、物語外でも時たまデートをしている様子です。
会合で自分は秋海棠の記憶を持つと名乗り出る輪。
自分が起こした事故がきっかけで、大人びていく輪にショックを受ける亜梨子。
小学生の輪は会うたびに、大人びていきます。
亜梨子は自分の事故がきっかけで大人の記憶を持ってしまった輪を心配しだします。
読者がどこから輪に感情移入していくのか、ですがヒロイン亜梨子が輪に同情するから、読者も輪に自然と気を配るようになるのかもしれません。
夢も過去も会合も拒絶する亜梨子。
自分は木蓮ではないといい、合唱部に入部して会合を休み出します。
亜梨子はこの後長々と覚醒を怖がり続けます。
その理由の一つに、子供ながら大人びていく輪の変化を間近で見てしまっていた事が影響しているかもしれません。
一成は「
過去に囚われることはない」と賛同します。
このシーンでの一成の一言は何気ない言葉に聞こえます。
しかしながら、この早い段階で作品全体のメインテーマが読者に示されています。
読者はこの物語は、過去に囚われてしまった者達の物語だ、と理解します。
一方、木蓮の過去を持つ亜梨子に惚れたという迅八。
迅八が好きな事を自覚する一成。
過去の一途な片思いは、そのまま現世にも引き継がれ、一成は不毛な想いに苦しみ出します。
夢を怖がる亜梨子、木蓮が転生した亜梨子に惚れたという迅八、それに嫉妬する一成。
それぞれが夢に振り回されていきます。
あばらを折られた現場にどうやって辿り着いたのか田村に聞かれる春彦。
「隠している事を話してくれ」と言われ、「今度ね」と春彦は約束します。
その
春彦に輪が会いに来ます。
怯える春彦。
このシーンは、ぼく地球という作品を楽しむにおいて、非常に重要なシーンです。
私は初めて読んだ時、意味をあまり理解出来ませんでした。
輪が嘘をつき、何かを画策していることは幼いながら分かったのですが、何故キーワードを集めたいのか、目的や本心が描かれません。
強い憎しみと目的意識があるらしい…という事が察せられるのみです。
輪が何に突き動かされているのか、それを読者に考えさせ想像させる事が、この作品全体のメインテーマに繋がっていきます。
最終巻にて具体的に表現されますし、更には後編のボク月でも輪や紫苑自身により分析されますので、ここでは「よく分からない」という感想で問題ない、とだけ説明しておきたいと思います。
輪は、
春彦を秋海棠と呼びます。
輪が会合で自分を秋海棠と名乗ったのは嘘でした。
輪は、前世での罪を春彦に問います。
春彦は、
秋海棠にはワクチンは1つしか作れなかったと告白しました。
何故、紫苑だけにワクチンを打ったのか。
その質問に「
木蓮を汚したからだ」と答えます。
秋海棠は、紫苑が木蓮の純潔を奪った事を憎んでいたので、その報復として紫苑を一人月基地に残すことにしたのです。
紫苑は皆の病死後、死体に囲まれて、9年間独りで生き地獄を味わった、と輪は教えます。
9年。
その長さに春彦は驚愕します。
輪は、その罪を償え、と春彦に迫ります。
7人分のキーワードを集めて、
月基地を破壊したいから、キーワード集めを手伝えと言います。
要は月基地には緊急用システムがあり、それを作動させる為にはメンバー全員の合意が必要となるため、人数分のパスワードを入力しなければならない、ということです。
お話自体が1990年頃に作られているため、作者含めて世間もまだトップの技術者しかコンピューターというものを理解せず、用語においてもその混乱がみられます(笑)
ここで、輪自身ははっきりと言葉にしませんが、紫苑は9年間の絶望の中で狂い、そして母星を全滅たらしめた戦争を憎み、地球という星を進んだ科学技術で守ろうと願っている様子が描かれます。
また、
輪こそが紫苑の記憶を持ち、秋海棠は春彦であることが読者に伝えられます。
輪は会合では嘘をついています。
自室に引きこもって泣く春彦に、田村が何があったと聞きます。
春彦は自分の過去の罪と、その結果の「9年」という年月の重みを抱えきれず、田村に軽蔑される事を恐れて逃げ出します。
多摩川に入水自殺した春彦を見かける一成と桜。
槐と繻子蘭は過去世では親友同士であり、桜は一成の報われない想いを不毛だと言います。
そんな話をしていたところ、春彦の自殺に立ち会います。
一成は春彦を助けようと飛び込み、そこで「紫苑」というテレパスを受信します。
何故、春彦が自殺時に紫苑と言ったのか…。この疑問が残ります。
秋海棠の記憶から、紫苑の性格が亜梨子の夢とは違い、かなり捻くれている事が伺えてきます。
迅八や一成の説明通りに不器用で世の中からはみ出ているような非行的な人物だと読者に伝えられます。
田村は無理強いはしない、いつか話してくれ、と春彦に伝えます。
亜梨子は
いつか輪は婚約を解消する、と考えていました。
夢で見た紫苑に憧れ、紫苑へとセーターを編みます。
このあたりの描写で、
亜梨子が輪を恋愛対象としておらず、ハンサムな紫苑に憧れを持っていることが分かります。
輪は、亜梨子が前世を思い出すのを怖がる理由を、「
紫苑がひどく木蓮を傷つけたことがあるからだ」と語ります。
春彦の台詞と合わせると、紫苑目線でも、『紫苑は木蓮を汚し、傷つけた』という事件があった様子です。
それを知らない亜梨子は無邪気な憧れを表明します。
輪は、亜梨子が紫苑の外見に惹かれている事を悟ります。
このページは個人的にかなり好きです。
輪の辛い葛藤が言葉少なに表現されています。
大人な体とハンサムな外見を持つ紫苑への嫉妬。幼い自分自身。亜梨子と釣り合わない現実。亜梨子に振り返ってもらえない寂しさ。
「9年」という歳月と現世においても必死で闘っている心の内が読み取れます。
輪は春彦に、紫苑として会合に参加しろ、と言い出します。
そして、
亜梨子にも紫苑を演じて近づき、キーワードを思い出させろ、と言います。
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